Jul 8, 2022

【NEWS】知的障害のある人の投票における課題を可視化し、選挙に参加しやすい環境をつくる「#CAREVOTE」を提唱

 この度、知的障害のある人の投票における課題を可視化し、選挙に参加しやすい環境をつくるアクション「#CAREVOTE」を提唱いたします。アクションの一環として、7月8日の岩手日報朝刊別刷にて、知的障害のある人とその家族が選挙に参加しやすい環境づくりを補助する「やさしい投票ガイド」を公開いたします。本ガイドは、知的障害のある人に向けたわかりやすい文章や表現に関して一般社団法人スローコミュニケーションの監修のもと作成しており、PDF版も特設Webサイトよりダウンロードいただけます。

特設Webサイトはこちら

■背景

政治に参加し、この国の主権者の一人として声をあげることができる選挙権は、人間としての尊厳を守るために必要な権利です(※1)。特に知的障害のある人(※2)は、生活そのものが政治の影響を受けやすいことから、選挙権は大切な権利であると私たちは考えています。2022年5月には、障害のある人による情報の取得や利用、意思疎通に係る施策の推進を目的とする「障害者情報アクセシビリティ・コミュニケーション施策推進法」(※3が施行され、その重要性は社会的にも増しています。
ヘラルボニーは、福祉領域の拡張を見据えた様々な事業を展開し、知的な障害のある人をはじめ、ありのままの個性が尊重される社会の実現を目指しています(※4)。
今回、2022年7月の参議院選挙にあわせ、選挙や投票における社会側の障害について考え、議論するきっかけになることを期待し、「#CAREVOTE」の提唱と「やさしい投票ガイド」の作成・公開を決定いたしました。


■「やさしい投票ガイド」について

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ヘラルボニーの考える、知的障害のある人が投票に行きたいと思ったときに役立つ情報をまとめたガイドです。発行にあたり、知的障害のある人に向けたわかりやすい文章や表現に関して多数の実践例を有する一般社団法人スローコミュニケーションが監修しています。左面には「字を書けなくてもてもよい」「メモを持っていってもよい」といった投票に向けた準備情報、右面には「代わりに書いてください」「わかりやすく説明してください」といった投票所で困ったときに役立つ情報を記載しています。
なお、「やさしい投票ガイド」は、実際に投票所へ持参し、活用することができます。

PDF版はこちらよりダウンロードいただけます


■関係者メッセージ
【松田 崇弥・文登(株式会社ヘラルボニー代表・副代表)】

知的障害のある人は「できない」から投票することも「できない」のでしょうか。それは違います。 知的障害のある人は「できる」のに、投票をするにはあまりにも障壁があるため「できない」ことがあるのです。“ケアしたい一票“があります。言い換えるならば、“ケアしなければならない一票”が確かに存在しているのです。だから私たちは、やさしい情報づくりで、やさしい社会の土台をつくることから、はじめたいと思います。知的障害のある人の「一票」が現代社会に受け入れられることは「普通」を肯定する社会ではなく「ありのままの姿」を肯定する社会や文化の醸成に繋がっていくと信じています。


【野澤 和弘氏(一般社団法人スローコミュニケーション代表)】

どうせわからないだろうと決めつける前に、わかりにくいものを変えましょう。それが社会の責任です。多様性を大事にする社会における礼儀です。政治に切実な関心を持った知的障害のある人は大勢います。自らの生活を支える福祉をよりよいものにし、差別や虐待をなくし、誰もが参加できる社会をつくるためには、政治の力が必要なのです。そのためのかけがえのない1票です。誰にとってもわかりやすい選挙、投票しやすい情報やサポートを今こそ、実現しましょう。


【東根 千万億氏(株式会社岩手日報社代表取締役社長・主筆)】

知的障害がある方々の投票行動に、これまで新聞社としてどのような務めを果たしてきたか。「ケアしたい一票がある」。ヘラルボニーさんからご提案をいただき、頭から冷水を浴びせられるような衝撃を受けました。多様な価値観を尊重する時代と言われながらも、見過ごされてきた課題はまだまだあります。今回の取り組みが日本中、世界中に広がり、すべての人々が総参加できる社会づくりに力を尽くしていきます。

 

 

※1:個人の尊厳を定める日本国憲法13条や選挙権について定める同15条、生存権について定める同25条参照。
※2:厚生労働省の調査によると、身体障害、知的障害、精神障害の3区分について、各区分における障害者数の概数は、身体障害者(身体障害児を含む。以下同じ。)436万人、知的障害者(知的障害児を含む。以下同じ。)108万2千人、精神障害者419万3千人となっている。
出典:内閣府「参考資料 障害者の状況 」(2019)https://www8.cao.go.jp/shougai/whitepaper/r01hakusho/zenbun/siryo_02.html
※3:内閣府「障害者による情報の取得利用・意思疎通に係る施策の推進」(2022)https://www8.cao.go.jp/shougai/suishin/jouhousyutoku.html
※4:ヘラルボニーではこれまでにも、「#障害者という言葉」(2019)など、障害者を取り巻く偏見や先入観を可視化するアクションを行ってきました。
出典:「異彩を、放て。」をミッションに掲げる福祉実験ユニット・ヘラルボニーが、ブランド初となる意見広告「#障害者という言葉」を展開(2020)https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000013.000039365.html