
岩手事業部。北海道札幌市生まれ、宮城県仙台市育ち。Abu Dhabi University - College of Business卒業。1年間のインターンを経て2023年9月に入社。岩手県内や東北の企業、自治体との共創企画を担当。
北海道で生まれ、宮城で育った田村渓一郎。
18歳で日本を離れ、中東の大学で唯一の日本人として学んだという異色のバックグラウンドを持つ。2023年9月に新卒でへラルボニーへ入社し、現在は岩手事業部の初期メンバーとして、企業や自治体と連携しながら地域に根ざした事業開発に取り組んでいる。
グローバルな環境で「マイノリティ」としての経験を積んだことが、彼の価値観を大きく変えた。福祉を軸にしながら、経済的・環境的・社会的価値の三つを兼ね備えた「サステナブルビジネスモデル」をヘラルボニーに見出し、ファーストキャリアとして選んだのだ。
「サステナブルビジネス」の追求と「岩手から世界へ」というミッションの実現に向けて。今日も地域と世界をつなぐ挑戦を続ける田村に、その原点と想いを聞いた。
サステナブルビジネスを追い求めて
ヘラルボニーにおける、あなたの役割やミッションを教えてください。
岩手事業部に所属し、岩手県内や東北の企業・自治体との共創企画を担当しています。ヘラルボニーは東京やパリなど国内外で事業を展開していますが、私たち岩手事業部のミッションは「地元に根を張り、地域の課題を解決すること」。そして、「岩手から世界へ」という挑戦の土台をつくることです。チームは少人数のため、プロジェクトマネジメントから商品開発まで、幅広い業務を担っています。
なぜヘラルボニーに入社したのですか?そのなかでも最大の理由、決め手になったことは何ですか。
2020年に仙台のPOP UPストアでキャストを務めた経験がありました。その頃から、ヘラルボニーの成長を間近で見てきたんです。福祉を起点にしながらも、ビジネスとして拡大していく姿に大きなインパクトを感じ、「かっこいい」と素直に思ったことが最初のきっかけでした。
入社の決め手は、大学で学んでいた「サステナブルビジネスモデル」を体現していると感じたことです。 ビジネスは、経済的価値だけでなく、環境的価値・社会的価値の三つが揃ってこそ持続可能になる。この考え方に強く共感していました。
ヘラルボニーは、アートというIPライセンスを通じて、福祉の領域に多様な価値を生み出している。そのバランスを実現している点に惹かれ、「このフィールドで挑戦したい」と思い、入社を決意しました。

「怖さ」を超え、人との関係をつくる
ヘラルボニーで仕事をするなかで、価値観が変わる出来事はありましたか。
障害のある方に対する意識は、確実に変化しました。インターンの時、人生で初めて訪問した施設で、重度の心身障害のある利用者さんと出会いました。そこで、自分が「何をしていいかわからない」という漠然とした恐怖を感じたんです。口では「福祉に関わりたい」と言っていたのに、いざ現場に立った時、自分の中にまだ“障害の区分(心の壁)”があったことに気づき、ショックを受けました。
その「区分」の意識は、どのように変化していったのでしょうか。
その後も施設訪問を重ねるうちに、少しずつ「障害のある方」ではなく、一人の人として自然に関係を築けるようになっていきました。今では担当している作家もいて、個人と個人としてお付き合いできていることが本当に嬉しく感じていて。仕事のなかで、相手を“属性”ではなく“人”として見る感覚が、自然に育まれていったと思います。
海外留学時代の体験も、今の意識に繋がっていますか。
はい。大学では唯一の日本人として生活していて、圧倒的なマイノリティの立場を経験しました。そのなかで学んだのは、国籍やジェンダー、人種といった属性ではなく、「個として向き合うこと」の大切さです。ヘラルボニーでの仕事は、その延長線上にあると感じています。相手の背景に境界線を引かず、個人として関わること。それが、自分にとっての大切な軸になっています。
「岩手から世界へ」に向けた土台づくり
入社してから、具体的にどのようなプロジェクトに取り組んできましたか?
岩手事業部として、地域の企業との商品開発を数多く手がけています。 たとえば、小松製菓さんとの板チョコ「choco nanbu MAGIC」や、Nagasawa COFFEEさんとのドリップバッグ・コースター制作があります。 また、JR東日本さんとの盛岡駅構内の装飾・アートバナー制作、岩手銀行さんとの協働パートナーとしての取り組みなど、地域の多様な企業と連携しています。 直近では、盛岡市と密に連携し、ふるさと納税への商品出品など、自治体が抱える地域課題の解決に重きを置いたプロジェクトにも取り組んでいます。
岩手事業部として、地域に根差すとはどういうことだと考えていますか。
企業や自治体が抱える課題はそれぞれ異なります。だからこそ、一つひとつの課題に丁寧に向き合い、理解すること。そして、短期・中期・長期という時間軸に分け解決策を考え、ともに実行していくことが、「地域に根差す」ことだと思っています。
ヘラルボニーのやりたいことに地域を巻き込むのではなく、むしろ企業や自治体の課題を、アートライセンスや商品開発といったヘラルボニーの手段で一つずつ解決していく。その積み重ねの先に、地域全体が抱える「人口減少」といった共通課題の解決につながると考えています。それこそが、岩手事業部のミッションだと捉えています。
地域密着型の事業だからこその醍醐味はありそうですね。
ヘラルボニーというブランド自体を地元の方々から「孫みたいに可愛がってもらえる」感覚はありますね(笑)。カンヌライオンズの受賞のような出来事も、「うちのヘラルボニーがまたフランスで受賞したらしいよ」と、地元のみなさんが自分のことのように話してくださる。地元だからこそ応援いただける方々に対して、誠実に向き合っていくことが、私たちの重要な役割だと感じています。
ヘラルボニーで果たしたい夢、目標を教えてください。
「岩手から世界へ」というミッションの、文字通りの「岩手」での地盤をつくることです。実際に世界の方々が岩手を訪れたとき、ヘラルボニーの思想がまちの空気として自然に根付いている。そんな場所にしていきたいと考えています。
地域のみなさんが、障害の有無や個人の特性を気にすることなく、互いに尊重し合いながら暮らせる環境。そうした風景が10年後、20年後に岩手で実現し、「岩手に視察に行こう」「岩手で学ぼう」と全国・世界から人が訪れるような状態をつくることが、私の目標です。
そして、その理想を実現するためには、社会そのものが変わるだけでなく、個人が変化していくことが大切だと感じています。ヘラルボニーという存在が、人と人とをつなぐ“接点”になることで、障害の有無や国籍といったあらゆる違いを超えて、多様な人々が自然に混ざり合える空間を生み出したい。
家族、友人、お客さま、クライアント、そして作家や施設のみなさん。そのすべての人たちが交わり、「ヘラルボニー」を感じてもらえるような体験を届けたい。日常の人間関係のなかに生まれる小さな摩擦を少しずつ減らしていくことで、互いを受け入れ合える社会を形にしていきたいと思っています。

岩手事業部。北海道札幌市生まれ、宮城県仙台市育ち。Abu Dhabi University - College of Business卒業。1年間のインターンを経て2023年9月に入社。岩手県内や東北の企業、自治体との共創企画を担当。




















