
2006年、住宅メーカーに新卒入社。営業職を経て経理へ異動し、以降経理一筋のキャリアを築く。前職では売上管理や開示業務などの通常経理業務に加え、株主総会のイベント化、海外子会社の立ち上げ準備など幅広い業務を経験。娘の不登校をきっかけに「社会を変える仕事がしたい」と決意し、2024年1月にヘラルボニーへ入社。現在は経営管理部で経営企画と経理財務を兼務し、予算管理、フランス子会社の経理、作家報酬計算などを担当。
「自分が正しいと思ったことを、ちゃんとやりたい」
新卒入社の面接のときから、そうやってまっすぐに信念を伝えてきた田中那奈は、経理一筋のキャリアを歩んできた。前職で感じた物足りなさ、そして娘の不登校という転機。娘とともに「普通じゃない」ことへの恐怖を乗り越えた先に見えたのは、ヘラルボニーが掲げる「“普通”じゃない、ということ。それは同時に、可能性だと思う。」というメッセージだった。
経理という職能を武器に、作家報酬の計算から予算管理まで。数字を通して、ヘラルボニーのミッションを支える彼女の挑戦を聞いた。
「自分が正しいと思ったこと」を貫く
ヘラルボニーに入社した理由と、そのきっかけとなった経験を教えてください。
私自身のキャリアの軸は「自分に正直に生きる」ことです。新卒の面接でも「自分が正しいと思ったことをちゃんとやりたいです」と伝えたほどです。「何のためにこの仕事をしているのか」と考え続け、納得できる環境で働きたいという想いがありました。
ちょっと手強い新卒ですね(笑)。最初は営業職からキャリアをスタートされたとか。
自分でもそう思います(笑)。学生時代の私は「営業が向いている」と信じて、住宅メーカーに新卒で入社しました。実際に働くなかで、思い描いていた仕事とのギャップや、お客さまの期待にどう応えるかという難しさに直面し、悩む日々もありました。「どうすればもっと誰かの役に立てるのか」と考え続けていたとき、上司が私の会計専攻の経歴を踏まえて、経理への異動を提案してくれたんです。それが転機となりました。
というと?
自分の性にすごく合っていたんです。明確なルールとゴールがあること。そして、自分の仕事が会社に直結して、貢献実感がわかりやすかったこと。何よりも明確な「誰か」に貢献できることがモチベーションになりましたね。

娘との時間が教えてくれた「本当に大切なこと」
ヘラルボニーへの転職には、お子さんの存在も大きく影響したそうですね。
娘が小学1年生のときに学校に通うことが難しくなったことが、転職を考えるきっかけになりました。几帳面な性格の娘は、環境の変化にうまく馴染めず、苦しんでいる様子がありました。
最初は戸惑いましたが、娘と向き合い悩むなかで「何を一番大切にすべきか」を考え抜いたんです。出した答えは、「この子が幸せだと思えること」。その一点を軸にして、一緒に歩もうと決めました。娘は2年間を家で過ごしたのち、小学3年生からフリースクールに通い始めました。多様な子どもたちと関わるなかで、自分の気持ちを素直に言葉にして伝える力を少しずつ身につけ、6年生になった今ではあんなに悩んでいたことが嘘のように、100名を超えるフリースクールでキラキラ輝きながら、全力で日々を楽しんでいます。
その経験が、ヘラルボニーの理念とつながっていったのですね。
そうです。娘との時間を通して、 「“普通”じゃない、ということ。それは同時に、可能性だと思う。」 というヘラルボニーの言葉に、深く共感しました。
「普通」とは違う選択をするときの不安や迷いを、私自身が体験したからこそ、 このメッセージが持つ力を心から実感できたんです。 だからこそ、こうした価値観をもつ会社が社会へと広がれば、 誰もが自分らしく生きやすい世の中になるんじゃないか。 そう信じて、2024年1月にヘラルボニーへ入社しました。
作家の想いを数字で支える
現在、どのような業務を担当されているのですか。
現在は経営管理部で、経営企画グループと経理財務グループの両方に所属しています。 主に 予算管理の取りまとめ、フランス子会社の経理、そして作家さんへの報酬計算や売上管理を担当しています。
経理といっても、ヘラルボニーならではの特徴がありそうですね。
はい。ヘラルボニーの経理で特徴的なのは、作家さんへの報酬計算業務です。 それぞれのプロダクトに対して作家のライセンスが紐づいており、 商品によっては複数の作家さんの作品が使われることもあるため、緻密な計算が求められます。 現在はまだ手作業の部分も多く、今後の効率化が大きなテーマですね。
また、事業形態も多様で、BtoCの小売事業、企業向けのアカウント事業、研修事業など、 すでに3つの主要な事業が存在しています。 それぞれ売上構造や会計処理の形が異なるため、経理としても複雑性が高い環境です。
入社してから、どんな環境だと感じましたか?
入社してまず感じたのは、成長途上のスタートアップらしいエネルギーに満ちた環境だということです。仕組みやマニュアルが整備されている途中である一方、裏を返せば、新しい仕組みを自分たちでつくっていける余地が大きい。やり方も、ツールも、自分たちで考え、選び、形にしていく。そして、それを積み上げていく過程そのものが、とてもチャレンジングで楽しいんですよね。
ヘラルボニーで働くなかで、やりがいを強く感じるのはどんな瞬間ですか?
一人の経理として、作家さんへの報酬計算という、ヘラルボニーのミッションに直結する業務に携われることは、大きなやりがいです。一般的に経理の仕事は、会社のミッションから少し距離を感じることもあるかもしれません。でもヘラルボニーでは、数字を通じてその理念を“実際に支える”感覚が持てるんです。
特に印象に残っている出来事はありますか?
印象的だったのは、ヘラルボニーがカンヌライオンズで受賞した時のこと。この受賞をお客さまや作家の方々へどう還元するかを議論するなかで、「報酬を期間限定で倍にする」というキャンペーンを実施することになりました。その計算を担当したときは、責任の重さと同時に、自分の仕事が作家の方々に直接つながっている実感があり、心から嬉しかったですね。
また、まさにキャンペーンの際に感じたことなのですが、メンバーの一人ひとりが、強い想いと作家への愛を持って働いているということです。社員同士のミーティングでも、お互いへの感謝やリスペクトを自然に伝え合う文化が根づいていて、その空気がとても温かいんです。
作家さんやご家族、施設の方々への敬意が、そのまま社内の関係性にも流れている。ヘラルボニーの「人をまっすぐに見る文化」は、社内外を問わず通じていると感じます。
娘に伝えたい、“働くって楽しい”
ヘラルボニーで、どんな夢や目標を実現したいと考えていますか
 今、一番ワクワクしているのは、IPO(新規株式公開)を目指していることです。
  前職でIR(投資家向け広報)業務を担当していた際、企業理念と投資家との対話の間にあるバランスの難しさを感じていました。
ヘラルボニーは「社会や文化を変える」という明確なミッションを掲げています。
  だからこそ、この理念を守りながら、資本市場でもしっかり評価されていくこと。その両立に大きな関心があります。
ミッションと成長の両立は、経理という立場から見ても重要なテーマですね。
ヘラルボニーには「作家ファースト」という価値観が根づいており、どんなに忙しくても、一つひとつの仕事に丁寧に時間をかける姿勢を大切にしています。企業が成長していくなかで、この価値観をどう維持し、さらに発展させていけるのか。
そのために経理として新しい仕組みをつくるときも、「何を大切にしていくか」を常に意識しながら進めています。仕組みづくりは単なる効率化ではなく、文化を支える行為でもあると思っています。
ヘラルボニーには、ミッションを心から信じているメンバーが集まっています。その信念の“密度”が、この会社の一番の強さです。私は、成長しながらもやりたいことを本気で目指し続ける。そんな「理想の会社」であり続けたいと思っています。
最後に、田中さん自身のこれからの想いを教えてください。
何よりも、自分自身がワクワクして働きたいという気持ちが原点です。そして、娘が生まれてからはその想いがさらに強くなりました。「大人って、楽しそう!」娘にそう感じてもらえるように、働くことも、誰かと本気で何かを成し遂げることも、心から楽しむ姿をヘラルボニーを通じて、見せたいと思っています。

2006年、住宅メーカーに新卒入社。営業職を経て経理へ異動し、以降経理一筋のキャリアを築く。前職では売上管理や開示業務などの通常経理業務に加え、株主総会のイベント化、海外子会社の立ち上げ準備など幅広い業務を経験。娘の不登校をきっかけに「社会を変える仕事がしたい」と決意し、2024年1月にヘラルボニーへ入社。現在は経営管理部で経営企画と経理財務を兼務し、予算管理、フランス子会社の経理、作家報酬計算などを担当。




















